
不登校対策
文部科学省は、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のう ち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」を「不登校児童生徒」と定義しています。「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では、 小学校の不登校児童は81,498人(およそ8万人)で、全体の1.3%にあたり、中学校の不登 校生徒は163,442人(およそ16万人)で、全体の5%にあたります。
現在文科省は不登校特例校という形で、特別な教育課程を編成できる学校を設置してお り、今後これらの学校は「学びの多様化学校」という名称に変わり、規模の小さい分教室型も含め300校の設置が予定されています。文科省は現在「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策COCOLOプラン」のもとに、子供の自分のペース、そしてやり方を大切に、多様な学びを保障することを指針としています。
文科省は来年度のCOCOLOプラン関連事業に115億円を概算要求し、20校分の不登校 特例校の設置準備支援と、10校分の設置後の運営支援、3600校分の 校内教育支援センターの設置、さらに教育支援センターのICT環境の整備やスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実を計上しています。
私は先日八王子市の不登校特例校である高尾山学園を視察しました。ここでは、市内の学 校から不登校になった子どもたちを受け入れています。しかし、高尾山学園に転校してか らの児童生徒の登校率は、全生徒の70%、また高校への進学率は97.5%です。この数字は、提供される学びの場に変化があれば、子どもたちは学校に通うことができることを示しています。
さて不登校とは一般的に、学業不振、家庭の問題、健康問題など大きく分けて3つの要因 が背景にあるとされています。その対応が喫緊の課題であることは、よく知られていま す。しかしこの3つの要因に通底するものとして、子どもたちの生活の変化があります。
多くの保護者の方々からは、子ども達は、ゲーム、宿題、テレビ、動画の視聴をしながら 過ごすと聞きます。今年の夏は特に暑さが深刻で、自由な時間には、子供たちはエアコン の効いた室内で過ごす時間が長かったと聞いています。ゲームや動画視聴は、コストをかけずに長時間遊ぶことができ、感染症や怪我の危険の少ないものです。
またゲームが子供達に求める生産性や効率性の追求は、大人が行う仕事の作業と親和性が あるため、大人も子供たちの長時間のゲームや動画視聴に,違和感がありません。また子ど も達は単に動画を視聴するだけでなく、ユーチューブ動画を二倍速で見たり、ティックトックで動画を次から次へと視聴するなど、展開の速い動画視聴に慣れています。また自分のペースで見ることをやめたり、また再開するなどのことが可能です。
このような話の展開の速さや自分のペースを好むのが今の子ども達であり、すでにそのような習慣をもつ人たちだとも言えます。このようなデジタルネイティヴと呼ぶに相応しい子供たちの生活形態がある一方で、リアルな体験の価値はますますコストが上がっていっています。リアルな体験の複雑さや面白さを提供するには、その面白さにたどり着くため の多くのコストが必要です。
現在の小中学生は、1日7~8時間を学校で過ごし、クラスに3、40人の生徒と一緒に 一斉授業を受け、授業は一回4、50分、それを1日に5本から7本繰り返します。だれ一 人とり残さないことがSDGsの取り組みではありますが、生徒に対し離席の自由を認めな い教室経営では、結局、学習進度の速い子にも遅い子に対しても、1日の数時間は我慢を 強いるものになっていることは想像に難くありません。
日本の労働生産性の低さは、すでに学校教育から始まっていると言われています。私たち大人は労働と教育を全く別個のものと捉えていますが、果たしてそうでしょうか?子供たちの学びの場は1日7時間の長時間を過ごすにあたり、その子にとっての時間の活用を目 指した工夫が必要だと考えられます。
先日視察した不登校特例校、高尾山学園で特徴的であったのは、多くのスタッフとプレイ ルームでした。プレイルームとは、卓球台やボードゲームが数多く置かれた遊びの空間で、生徒はこのプレイルームと授業のどちらにも参加可能でした。そのため、この学園の 先生方の合言葉は”打倒プレイルーム”。一度学級から離れた子供達が興味を持つ授業をすることが学園の先生方に求められていました。
また教科別の数学や英語の教室が設けられており、子どもたちは、英語や算数専用にレイアウトされた部屋に集まり、習熟度別に学習をしていました。英語の授業はデジタル教材 やユーチューブ動画を使用するなどの工夫がなされ、授業を子供たちが面白いと思うもの に近づけていく費用がかけられていました。
さて、このように、学校が提供する学びのスタイルに合わない生徒を、一部に隔離すると いう考え方ではなく、学校の授業が子どもたちにとって面白いものであり、いかに柔軟で 多様な学びを子供達に提供できるかという試みが学校に求められています。そこで、本市の不登校児童生徒の現状について、伺います。
A1:本市の不登校児童生徒の現状について、お答えいたします。
令和3年度の同調査結果では、本市の小学校の不登校児童は91人で、全体の1.6%にあたり、中学校の不登校生徒は174人で、全体の6.7%にあたります。本市では、不登校の人数だけでなく、その要因も調査しておりますが、小学校では、親子や家庭に起因する事案が多く見られます。中学校では、いじめを除く友達関係や進級時の環境の変化に加え、学業の不振が起因する事案が多く見られます。
Q2:本市の不登校児童生徒の現状については分かった。
不登校児童生徒は、別室で学習したり、さらに登校が難しい場合は、やむなく家庭で過ごしたりしているケースも多いと聞いている。
市では、このような児童生徒に対してどのような対応をしているのか伺う。
A2:学校に登校できない児童生徒への対応についてお答えします。
まず、それまで登校できていた児童生徒が連続して休むなど、学校でわずかでも変化が見られた場合には、すぐに家庭と連携して不登校の未然防止に取り組むとともに、子ども家庭支援センター等の関係機関等と連携して対応しています。
次に、登校はできるが教室に入ることが難しい場合は、校内の別室において、個別に学習したり、タブレット端末を用いて教室で行われている授業を閲覧したりして学習しています。昨今、感染症の対応もあり、別室は保健室とは限らず、校内の空いている教室を利用する学校も多くあります。また、別室での指導に当たる教員は、担任だけでなく、校内の教員が対応するほか、学習パワーアップサポーターやボランティア等が対応しています。
さらに、学校へ来ることが難しい場合は、学習適応教室を利用しているケースもあります。
Q3:不登校児童生徒への主な対応については分かった。
先にも述べたように不登校特例校では、柔軟なカリキュラムが組まれており、子供たちが学ぶことが楽しい、学校が楽しいと思えるような工夫がなされている。市の学習適応教室では、どのような学習や活動を行っているのか伺う。
A3:本市の学習適応教室の現状について、お答えします。
本来、学習適応教室は、子供たちの学校復帰を支援する役割が大きいとされてきましたが、昨今の不登校の児童生徒の状況は複雑化し、「学校に復帰することありき」だけでなく、個々の状況に応じた支援・指導を行っています。現在、小学生4名、中学生15名が常時通室しているほか、随時、見学や体験を行っています。
学業の不振が不登校の理由になることが多いため、在籍校とも連絡をとり、本人と相談しながら学年を遡って基礎的・基本的な学習をすることもあります。特に、国語や算数・数学は、スモールステップで取り組みやすく「できた、分かった」という手ごたえを実感しやすいことから、取り組みやすいという傾向が見られます。また、学校からタブレット端末を持ってきて、調べ学習を行ったり、プログラミングの学習を行ったりもしています。さらに、昨年度からは、近隣の畑での野菜収穫体験、多摩六都科学館での理科学習、スポーツセンターでのボッチャ体験など校外での体験学習も積極的に取り入れています。
学習適応教室を利用する子供たちは、学校に登校できない期間に人と関わる機会が減っていたり、他者とのかかわりにも苦手意識を感じていたりすることが多いため、小集団による簡単なゲームや他愛ないおしゃべりをする時間などを意識的・計画的に取り入れ、ソーシャルスキルトレーニングとしています。
Q4:学習適応教室の学習や活動について理解した。学習適応教室に通室する子供たちは、環境の変化などに配慮をする必要があると考えられる。学習適応教室で工夫していることはあるか、伺う。
A4:学習適応教室で工夫している点についてお答えします。
長期休業明けは、どの子にとっても生活ペースや人とかかわる時間の変化が大きいことから配慮を要する時期です。通常は、9月1日が始業式で、その前日までを夏季休業日とし、児童生徒の登校日を設定していませんが、学習適応教室では、8月末の数日を自由登校日とし、新学期に向けた準備期間を設定しています。今年度は、8月31日に「夏のフェスティバル」と称して縁日的な行事を予定しており、小・中学生合同で出店を出したり、ゲームをしたりすることを計画しています。
また、学習適応教室では、定期的に保護者との面談も行い、お子さんの状況に応じた助言・援助や進路相談も行っています。今年度から、中学校の教員経験のある指導者を1名増員し、より進路相談に応じやすい体制をつくりました。
Q5:学校に行くことができない子供たちは、様々な事情や特性があり、多様な居場所づくりが必要だと考える。学習適応教室以外にフリースクールを利用しているケースがあるかについて伺う。
最後に:不登校児童生徒の問題は、学校だけのものではなく、社会全体で考えなければならないものとなっている。不登校児童生徒本人は勿論のこと、学校に通えない子供を支える家庭にも支援が必要である。市では、各学校において、担任だけでなく、学校全体で別室登校を認め、対応したり、学習適応教室で工夫した指導を行ったりしていることが分かった。今後もこのような支援を拡充するとともに、他の支援方法も考えていく必要があると考える。他の地域で行っている不登校特例校もその一つであり、本市でも検討し、さらに多様な居場所を提供することを要望する。
A5:フリースクールを利用している児童・生徒の現状についてお答えします。
本市でフリースクールを利用している児童・生徒15名程度です。利用しているフリースクールは、様々で市内だけでなく公共交通機関を利用して通っているケースもあります。フリースクールに通っている場合であっても定期的に学校と保護者が連絡を取り合い、情報交換を行っています。フリースクールでの通室状況や学習内容等を確認のうえ、学校長の判断で出席扱いとすることもできます。
不登校の理由や状況は様々であり、子供が安心して過ごせる場所を提供することが前提となりますが、個々に対応するためには、学校や教員だけでなく、関係諸機関や社会全体との連携・協力も推進してまいります。